
「Salesforce」「Slack」「Google」「Adobe」など、パソコンに関するサービスをコンピューターネットワークから入手できるクラウドサービスは、急速に企業によるサービス利用が進んでいます。普及が進むSaaS(Software as a Service)ですが、その普及率とは対照的にその定義や、実際に何ができるのか明確にわかっていなかったり、その種類の多さに困惑したりしてしまう人も多いのではないでしょうか。特に会社の手掛ける事業や業務内容に適したツールを選択できている企業はまだまだ少ないかもしれません。
今回は、とあるITベンチャー企業の方に実際のツール活用事例、その利点、今後活用を考えているSaaSについて詳しくインタビューしました。
この記事の目次
導入事例
企業にとってSaaSは、業務効率化やコストダウンを図ることによって、成長を促してくれる便利なツールでしょう。一方で、導入したものの、使い方を完全に把握ができないままだと、業務内容の効率を最大化できず、導入コストだけが負担になってしまう事態にもなり兼ねません。
そこで実際に企業が活用しているSaaSについてインタビューを実施し、読者の皆様が、自社の状況と照らし合わせて考える際に参考になるような、具体的な事例を伺いました。
コミュニケーションや案件を一元管理(Slack)

導入背景
Slackは前職時代に使用しており、使い慣れていました。また、エンジニアたちも基本的にSlack上でコミュニケーションを取っていたので、特に深く考えたり、検討する飛鳥なく、Slackを導入していました。
使用方法
社内のコミュニケーションツールとして使用するのはもちろん、案件管理にも使用しています。
課題達成
進捗管理の観点からみると、Slackの導入は業務効率化につながったと感じています。
良かった点
チャンネルを適切に分けることができる点とワークスペースを作成できる点は、案件管理や幅広く事業を展開するうえでとても役に立っています。
悪かった点
特にないですが改善できる点はあると思います
チャンネルを追加する際、増えすぎないように「使われなくなったら消す」といった対策を取っていますが、Slack側から何かしらの通知があると便利です。
もう一つは、音声通話とビデオ通話がSlack内でも高音質、高画質で使用できたらベストだと思います。
契約データをクラウド上にて管理(Cloud Sign)

導入背景
クラウドサインは以前、契約データを管理するために利用していました。VTuberは絵を書く作業と、その絵のモデリング作業が必要となりますが、それぞれに専門家が存在します。そのため、VTuberを動かすにあたり最低3人(絵師さん、モデラーさん、ライバーさん)との契約が必要でした。13組ならば、39校の契約書が必要になります。それを郵送対応や郵送確認にするとかなりの手間です。さらに精神的にも負担があり、思考の工数を削られる点がありました。そういった状況を前提とし、検討した結果、「クラウド化しよう!」となり、クラウドサインを導入しました。
使用方法
絵師さん、モデラーさん、ライバーさんといった方達との契約書をクラウド上で管理するために使用しています。
課題達成
業務の性質上、大勢の方と契約を交わす機会が多く、紙媒体の代わりにインターネット上のデジタル媒体を使用することで、郵送対応や郵送確認などに掛かる手間が省けました。
良かった点
クラウド上で契約書の管理を行うことで、郵送やその確認に必要な工数を削減できた点です。
悪かった点
特にないです。
今後導入が期待できるSaaS
現在、Salesforceさんから2、3通程メールを頂いています。提供されているサービスにはあまり詳しくないのですが、お話を聞いてみたいとは思っています。
他には会計ソフトFreeeを使用していますが、使用してみて結構手がかかる印象です。経理部の社員によると、請求書のアップロードやデータ記入が少し手間なので、その点が改善されるのであれば、新しいサービスを導入したいと考えています。
SaaS導入の際の注意点
1、準備を整える。
SaaSは導入しただけで成功が約束されるようなものではありません。導入する企業にも慎重に選択する判断力や受け入れ姿勢の確立、ツールを使用する人材のリテラシー教育などの準備が必要です。企業におけるSaaS導入後の失敗例に多く見られるのが、「コストダウンに繋がらなかった」「想像した効果が出なかった」「使いこなせなかった」といった意見です。これらの原因は確実に予期できるものではありませんが、上記のようにしっかりと受け入れ態勢を確立することで防げる事例もあるのではないでしょうか。まずはSaaSは業務効率の向上を確実に約束するものではなく、その用途や、使用方法をしっかりと把握できているかということを念頭に置くことが大事です。
2、セキュリティ
現在のクラウド事業者はもれなく強固なセキュリティ対策に取り組んでいます。そして、一昔前に挙げられていたセキュリティレベルの低さは払拭されつつあります。しかし、自社のセキュリティーポリシーと使用するサービスのセキュリティーポリシーとのマッチングについては注意する必要があります。なぜなら「特定データベースとアクセスを一部の役職に制限している」「外出先からのシステムアクセスの一部制限を設けている」など、業務によっては独自のセキュリティポリシーを設定している企業もありますので、そういった企業のポリシーに使用するツールが支障を及ぼすことはないかなどの点は留意が必要です。
3、ベンダーの将来性
SaaS市場における競争は激化しています。現在既存サービスをSaaS化してユーザーをクラウドに移行させようとしている大手企業と、クラウドの発展とともに成長してきた新興企業が互いに顧客獲得を狙った取り組みを行っています。SaaSを選ぶ上では、「ベンダーがどのようにサービス展開を考えているのか」といった点も重要な判断ポイントです。これは、ベンダーがこれからSaaSの提供を拡大していくのか、それとも停止する恐れがあるのかを判断することで、SaaSの長期的な運用を考慮した際に、利用サービス停止に伴う乗り換えの負担リスクを軽減することができます。また一度使用感を把握して業務に適応させたSaaSを変更するのは簡単ではない為、ベンダーの将来性やその方向性に着目することは重要です。
まとめ
今回の記事では、近年企業のDX化が進められている状況の中、数多く存在するSaaSをどのように選択していくべきなのか、その際にどのような点に留意するべきなのかについて、インタビューさせていただきました。実際の活用事例とその利点、今後活用したいツールについて、さらにはそれらSaaSの活用の際に注意する点についてお伝えさせていただきました。SaaSの導入後に失敗しない選択を行うためには企業側の準備が必須です。あらゆる観点から自社にとって最適なSaaSに巡り会えるように今回紹介したようなポイント・注意点を意識しつつ検討しましょう。